私、何でこんな所にいるんだろう?
この校門を潜れば、晴れて私はこの学校の生徒だ。
だけど……だから何?
それが何だっていうの?
私は、ばあちゃんの為にこの学校に合格したのに、
ばあちゃんはもうどこにもいないじゃないか。
“入学おめでとう!”と書かれた大きな横断幕が、校舎にぶら下がっている。
ちっともめでたくなんかない。
私の入学を祝ってくれるばあちゃんはもういないんだから…。
その時の私は、校門を潜れば、ばあちゃんがいない現実を今以上に突き付けられてしまいそうで、とても一歩を踏み出す気にはなれなかった。
体育館のある方から、『では、入学式を始めます』というアナウンスが微かに聞こえて来て、
ダメだ。家に帰ろう。
そう思ったその時、
背後へと導くように、私の髪が春風に舞った。
「何してるの?」
舞った髪を耳に掛けながら目が合った彼は、小さく首を傾げて不思議そうな顔で私を見ていた。
唇にほんのり笑みすら浮かべて、見たこともないほど整った容姿の彼に私の目はもう釘付けで、
その質問が私に対するものだと分かるのに、少し時間がかかった。



