テストの前に、たまたまこのページを開かなかったら気付かなかったかもしれない。


もしかしたら、気付かずにこの教科書を捨てる日が来ていたかも。


それくらい小さな小さな吹き出しで、


いっそ気付いて欲しくないというような、小さな小さな文字で、


悠太先輩の優しい言葉がそこにあった。



「…何言ってるのピヨちゃん。俺なわけないでしょ」


「うそですっ!絶対に先輩ですっ!!だって…」



だって、私を“ピヨちゃん”なんて呼ぶのは、悠太先輩しかいないもの。



「……」


悠太先輩は肯定も否定もしないけど、諦めたようにため息をついて眉を八の字にして笑った。


「悠太先輩。私を応援してくれたんですか?」


「さぁ。どうだろうね?」


「私にご褒美をあげたいと思ってくれたんですか?」


「ピヨちゃんは、犬みたいだからね。良い子にしてたらご褒美くらいあげたくなるもんでしょ?」



意地悪く笑う悠太先輩。


だけど、その瞳の奥に優しさを秘めていること、私は知ってる。



「悠太先輩!!大好きですっ!!」


「あー。また始まった。」


「先輩!もう私と付き合っちゃいましょーよ!!」


「無理です。」