驚いたように顔を硬直させる絢。
そんな絢から、俺は視線を逸らす。
「もう二度と付き纏わないで欲しいって言った」
「な……何でそんなこと…!?」
「無理なんだよ」
「……え?」
「俺にはピヨちゃんを幸せにすることは出来ない」
そう言う俺に、絢は眉を寄せて黙り込む。
絢は、俺の過去を1番よく知っている。
俺のこの言葉の意味を、直ぐに察することが出来たんだろう。
そんな絢に俺は自嘲気味に笑ってみせた。
「俺はさ、絢。実はもうとっくに母さんのことなんて何とも思ってないんだよ。恨むような気持ちもさらさらないし、今はどっかで上手くやってりゃいいな…くらい思ってる」
「……っ!じゃあ何でっ……」
「分からないんだよ。“愛”ってやつが」
俺は、その場に屈み込むと首の裏に手を当ててどこか遠い昔を思い出した。
「聞いたことない?大人になってからの愛情表現って、子供時どれだけ愛されたかで決まるって。
子供の時、きちんと愛されて育った子供は、大人になった時に愛すのも愛されるのも器用にこなす。
だけど、子供の時上手く愛を受けずに育った子供は大人になった時、愛し方も愛され方も分からないまま」



