「こ…これ、大丈夫なんですか!?落ちないんですか!?」


「大丈夫だって。ほら」


「ぎゃあぁぁ!!揺らさないでくださいよぉっ!!」


みるみる上へと上っていく観覧車。


その中では、椅子の背もたれに必死にしがみつき怯えている私と、それを見てカラカラと楽しそうに笑っている悠太先輩。


何とも色気のないムードになっていた。



おかしいぞ?

ここでいいムードになるつもりが!!

そういえば私、高所恐怖症なの忘れてた!!



「意外だねー。高い所ダメなんだピヨちゃん」


「ば、馬鹿と煙は高い所が好きって、あれ単なることわざですからね!バカでも高い所は怖いんです!」


「俺、別に何も言ってないけど。ピヨちゃん自虐的過ぎじゃない?ってか、それことわざじゃないし」


そんなやり取りをしている間にも、観覧車は上へ上へと上っていく。


観覧車って、乗っていると意外に早く動いてるんだな。


意を決して少しだけ目を開けて、観覧車のガラス張りになっている窓から、ゆっくりと下を見下ろしてみる。


「うわぁ…凄いっ!」


さっきまで目の前にあった夜景が、もうあんなに遠くにある。


息を飲むほど壮絶なそれは、高所恐怖症なんて忘れてしまいそうなほど、綺麗なんて言葉じゃ足りないくらい綺麗だ。