こういう時、どうしても過ぎってしまう。


あのどうしようもない母親の影が。


みんながみんな、あんなのじゃないことなんて分かってる。


だけど、もしもあんな不安定なものに身を預けてしまったら……?


裏切られた時に“やっぱりな”と確信するのは、もう勘弁だ。


ピヨちゃんみたいに、ただがむしゃらに愛し抜く自信もなければ、愛される自信もない。


こんな気持ちを抱えたままじゃ、前になんて到底進めない。


だけど…––––



「へへっ……悠太先輩……大好き……」


「ぷ。夢でまで言ってら」



繋いでいない方の手で、彼女の前髪にそっと触れる。





確かに俺は、“進みたい”と思い始めていた––––。