「先輩の好きな食べものってなんですか?」



悠太先輩の心の傷と向き合おうと決めてから、数日が経とうとしていた。


12月に入った町並みは、クリスマスという恋人たちの一大イベントに向けて早くも色づき始めている。


「うん。あのさ。何でピヨちゃんはついてきてるのかな?」


私より5歩ほど先を歩く悠太先輩が、笑顔8割苛立ち2割といった表情で振り返る。


ダッフルコートにマフラーをして、背中にはカーキ色のリュック。


薄暗くなってきた駅周辺にはイルミネーションがきらめき、校外仕様の悠太先輩とのコントラストがあまりに眩しくて目も開けられない。


開けるけどね!

無理矢理にでもね!



というわけで、今私はなんと、悠太先輩と下校中です。


「そうですね!そういえば一緒に帰るのって初ですよね!悠太先輩と初下校記念日!忘れないようにちゃんとメモしておかなくっちゃ!」


「…もう、いよいよ言葉が通じなくなってきたなぁ…」


諦めたように一つため息をつくと、悠太先輩は再び歩き出す。


先輩ごめんなさい。