ちぇー。


先輩、面倒臭がりなくせに、ああいうサービスは平気でしちゃうんだもんなぁ。


本気で先輩に思いを寄せている子にはしないのは分かってる。


遊びの子にだけする…まぁ、挨拶みたいな軽いキスだということも。


だけど、好きな人と他の誰かのキスシーンなんて私だって見たいわけがない。


あーダメダメ。

こんなことで、一喜一憂はしないんでしょ!


私はこんなものが欲しいんじゃないんだから。

私が欲しいのは、こんな寂しいキスじゃない。



私が欲しいのは、


相手を想って、相手にも思われる。


ちゃんと“好き”という気持ちのこもった、温かいキスなんだから。



すると、私の視線に気付いたのか、未だ囲まれたままの先輩と目が合ってしまって、ドキッと心臓が跳ねる。


慌ててグラウンドに視線を戻せば、


「ピヨちゃん」


「わぁ!」


し、瞬間移動ですか!?


悠太先輩にすぐ後ろから声を掛けられ、思わず仰け反ってしまう。


「ゆ、悠太先輩…!」


「さっき目が合ったのに逸らしたでしょ?」


「ゔっ…」


バレてましたか。