「サクはずるいよ、私のこと振り回して。


ずっと前から、元カノのこと忘れられなかったんでしょ。


それなのに、私のこと好きなふりしてつきあって」


「違う、朱里と出会って朱里を好きになったのは本当だから。


だけど、元カノと偶然再会して、自分の気持ちに気づいたんだ。


本当にごめん」


「・・・許さない」


「朱里・・・」


朱里は涙をふいて、笑顔になった。


「サクよりずーっとイイ男とつきあって、私をふったこと絶対に後悔させてやるからね」


「朱里なら大丈夫」


「あー、スッキリしたらおなかすいちゃったな。


ケーキ食べていい?」


「おごるよ」


嬉しそうに、でもどこかさみしそうに、強がってケーキを食べる朱里は、かわいかった。


「これからは、仲のいい同期としてよろしくな」


「リョーカイ」


円満な別れになった、とホッとした。


だけど、朱里と別れてからすぐに葵へ連絡する気にはなれなかった。


なぜかわからないけど、亮太と話せてないっていうのもあるし、朱里を傷つけてしまったっていう負い目もあったのかもしれない。


葵が好きな気持ちは揺るがないのに。


葵を抱きしめた日から、もうすぐ2ヶ月。


身動きできないまま、毎日を過ごしていた。