6月の金曜日。


朱里と待ち合わせするように慎一に頼んで、二人より少し遅れて会社を出た。


慎一は細かいことを一切聞かず、俺の頼みをきいてくれた。


梅雨の真っ只中で、傘をたたく雨音がうるさいくらいだった。


店に入ると、奥のテーブル席に朱里と慎一が向かい合って座っていた。


俺の存在に気づいた朱里は、速攻で席を立とうとしたけど、俺がすばやく隣に座ってブロックした。


「サク、どういうこと?


慎一くんに嘘つかせてまで、私をだましたの?」


「朱里、俺はちゃんと話したいだけ。


いつまで俺を避けるつもり?」


「朱里、サクの言う通りだよ。


逃げたって、なんにも変わらないだろ。


ずっとこのままでいるのは良くないって、朱里だってわかってるだろ」


「二人して、私のこと責めてる」


「責めてなんかない。


ただ、俺の気持ちをわかってほしいだけだよ」


「サクの気持ちって、なに?


私と別れて、元カノとつきあうってこと?」


涙をいっぱいためた朱里の顔を見たら、別れ話を切り出しづらかった。


だけど、言うしかない。


葵とつきあうことができなくても。


このまま、葵への想いを隠したまま、朱里とはつきあえない。


「ごめん、朱里とはもうつきあえない」


朱里の涙が、こぼれてしまった。


「サク、朱里、あとは二人でケリつけろよ」


慎一は伝票を持って、帰っていった。