約束してから1ヶ月過ぎても、葵から連絡はなかった。


俺も、葵に連絡できないでいた。


朱里とも亮太とも、きちんと話せていなかったから。


朱里とは会社で顔を合わせる機会が何度もあったけど、


「今日は友達と約束があって」


「ちょっと体調悪くて」


はぐらかされて、二人で会うこともできなかった。


俺も、夏休みに向けて準備がたてこんでいて、仕事を言い訳にして逃げてしまった。


亮太は、電話してもメールしても応答なし。


当たり前だよな、親友と彼女から裏切られたら、俺だって無視したくなる。



俺もどうしたらいいのかわかんなくて、洋介を誘って飲みながら相談することにした。


いつもの居酒屋で、これまでの経緯を説明したら、


「サクが一方的に会いたいって言ったって、相手が会いたくなかったら成立するわけないだろ。


誰かさ、共通の友達とかいねーの?」


「いることはいるけど、何を頼むんだよ」


「友達と彼女で待ち合わせしてもらって、そこにサクが行けばいいじゃんか。


最初は3人で話してさ、友達にはあとで外してもらって、二人で納得するまで話せばいいだろ」


「・・・なるほど」


「サクは、もう少しズル賢くなんねーと」


「俺だってイイコぶってるわけじゃねーけど」


「なんだかんだ言ってマジメなんだよな、サクは」


「洋介、ありがとな」


「一杯おごれよ」


「カオリとは順調?」


「なんだよ突然」


「相談にのってもらった礼に、ノロケ話聞いてやろうと思って」


そっから、たっぷりノロケ話を聞かされた。


でもイヤな気分にはならず、むしろうらやましかった。


高校生の時は、ただ葵がそばにいてくれれば満足だったのに。


数年後、こんな関係になるなんて、思いもしなかった。