遠まわりの糸

「朱里!」


聞こえてるはずなのに、振り返りもしない。


猛ダッシュして追いつき、腕をつかんだ。


「なんで帰るんだよ」


振り返った朱里は、涙をいっぱいためたまま黙っていた。


「黙ってたらなんもわかんねーだろ」


「・・・私の誕生日なのに、なんであんなデレデレしたサクの顔を見なきゃいけないのよ」


「デレデレなんかしてねーよ」


「もうイヤだ、帰る!」


「勝手にしろ!」


お母さんたちに囲まれたからって、意識するわけねーのに。


朱里の意固地な態度にカチンときて、俺も思わず突き放してしまった。


朱里は走っていってしまい、俺は荷物を取りにグラウンドへ戻った。


今朝と同じように慎一の車に乗せてもらい、寮へ送ってもらった。


「サク、朱里とケンカか?」


「・・・まあ、そんなとこ」


「不本意かもしれないけど、男から折れた方がいいぞ。


女はいつまでも覚えてて、時間がたてばたつほど記憶が鮮明になるからな」


「わかった」


寮に戻ってシャワーを浴びて、朱里に電話したけどつながらなかった。


「・・・ったく、電源まで切ることないだろ」


朱里のアパートに行き、インターホンを押したけど応答がなかった。


「朱里、いるなら開けてくれよ」


それでも、ドアは開かなかった。


仕方ないから、プレゼントをドアノブにかけて、でもやっぱり直接渡したいからかけるのをやめて、寮へ戻った。


「あーあ、どーすっかな・・・」


前から欲しがってた財布を買ったのにな。


朱里、誕生日なのにどこで何してんだよ。


電話はつながんねーし、メッセージは既読になんねーし。


その時、スマホの画面がパッと明るくなった。