遠まわりの糸

俺は、ほどほど酒はいける方だけど、朱里は無理して俺のピッチについてきたらしく、2時間くらい過ぎたあたりから、


「どーしよー、眠くてしょうがないんやけど」


と言いながら、俺の肩に寄りかかってきた。


これはヤバそうだと思って、店員に、


「すみません、お水ください」


と頼んで、


「朱里寝るなよ、ほら、水飲め」


朱里を必死で起こした。


「サク、だいじょうぶやって」


そう言いながら、水を一気飲みして、ゴホゴホむせた。


「だいじょうぶじゃねーだろ、家まで送るから帰るぞ」


「えー、もう帰るん?」


朱里の甘えたような関西弁を少し意識しながら、朱里を半分抱きかかえるようにして、店から15分くらい歩いた朱里のアパートまで送った。


「朱里、部屋の鍵どこ?」


「えーっとな、バッグの内ポケット」


「開けるぞ」


暗い部屋に明かりが灯り、とりあえずベッドに朱里を座らせ、帰り道の自販機で買ったペットボトルの水を渡した。


朱里は少し目が覚めたようで、


「サクごめんね、私重かったでしょ?」


標準語に戻っていた。


「すげー重かった」


「しょーがないじゃん、眠くて力はいんなかったんだし」


「朱里、酔うと関西弁出るんだな」


「えー、ほんとに?


油断してた、恥ずかしい」


「もう標準語に戻ったし、俺そろそろ帰るな」


カバンを持って玄関に向かった時。


朱里が、後ろから抱きついてきた。