遠まわりの糸

サッカーの試合を生で観戦するのは久しぶりだった。


朱里は、高校でサッカー部のマネージャーしてたから、サッカーの知識もあるし、一緒に観てて楽だった。


「勝ったから、乾杯しない?


うちの近所に、よく行く居酒屋があるんだ」


「朱里って、実家じゃねーの?」


「あれ、言ってなかったっけ?


大阪出身だから、大学からずっと一人暮らし」


「そうなんだ、関西弁出ないから気づかなかった」


「心を許した人にだけ関西弁でちゃうの、なーんて」


「そっか、まだ俺には心を許してないんだ・・・」


「なんでサクがいじけるわけ?」


「えっ、あ、いや、それはさ、まあいいじゃん」


必死でごまかす、ダメな俺。


心を許してほしいって、伝えればいいのに。


あわよくば、俺とつきあってほしいって、言えばいいのに。


どうしても、言葉に詰まってしまう。


素直に気持ちを伝えるって、難しい。



朱里が連れてきてくれた居酒屋は、おしゃれなカフェみたいな感じで、女子が好みそうな店構えだった。


カウンターに並んで座った俺たちを見て、まわりは恋人同士だと思うんだろうか。


微妙な距離感があるんだけどな。