「よお」


言われた居酒屋へ行くと、洋介はもう座ってビールを飲んでいた。


「実習前にカットしてもらったけど、何かあった?」


「俺はカットのためだけにサクを呼んだりしねーよ」


「じゃあ何だよ」


ビールでいいだろ、と洋介は店員を呼び止め、注文した。


「就活で忙しいのに、悪いな」


「いや、実習も終わったし、切り替えるにはちょうどいいし」


「サクは、何系の就職先めざしてんの?」


「それがさ、なんとなく流れで教職課程とったけど、俺には教師は無理ってわかってさ。


俺の友達は、そのまま教師になるっていうヤツが一人と、商社を目指すヤツが一人。


俺は、まだ絞れてねーんだよな」


「カオリは、飲料メーカーに決まったってさ」


「マジかよ、やっぱそういうの聞くと焦るな」


「サクは、サッカー関係を考えてはないんだ?」


「サッカーねぇ・・・裏方とか、雑誌関係とか?」


「それもあるけど、子どもたちに教えるコーチを派遣する会社ってのはどうなの?」


「コーチ?」


考えたこともなかった。


好きなサッカーに関われる仕事なんて、ないと思ってたから。


「実はさ、この前店にコーチやってるっていう人が来て、その人が所属してる会社っていうのが、サッカーに限らず体操とかスイミングとか陸上とか、コーチを学校や民間チームに派遣する会社なんだって。


その話聞いたとき、これってサクにあってんじゃねーかな、って思って。


名刺もらっといたんだ」


大事そうに取り出した名刺を受け取った。