葵は、俺のバカな質問にも丁寧に答えてくれて。


俺は、葵に褒めてほしい一心で、勉強したっけ。


そうやって、進む大学は違っても、ずっとそばにいられると信じていた。


まさか、こんな形で離れることになるなんてな。



三者面談が終わって母さんと高校を出てから、ずっと気になっていたことを聞いてみた。


「母さんは、葵ん家が引っ越すこと聞いてたんだろ?」


「聞いてたけど・・・サクには絶対に言わないで、っていうのが葵ちゃんの希望だったのよ。


サクが知ってしまったら、離れたくなくなってしまうからって。


サクのことを嫌いになったわけじゃないのよ。


本当に運命の人なら、いつかきっとまた会えるんじゃない?なんてね」


母さんの冗談半分の言葉は、俺を少しだけ前向きにしてくれた。


「ふーん、じゃあ母さんは父さんが運命の人だったんだ」


「そうよ、私たちも一度離れたけど、めぐりあったもの」


初めて聞いた話だった。


「へえ」


「なによ、その薄い反応」


「いまさら聞いても、しょーがないし」


「まあいいけど。


サクは葵ちゃんのこと、ほんとに好きなのね」


「うるさいよ」



運命の人、か。


いつか葵にめぐりあえる日まで、俺は俺でがんばらねーとな。


その足で塾の夏期講習を申し込んだ。


葵。


俺は、いつか会えるって思ってるから。


母さんを通じてでもいいから、連絡してこいよな。