始業式とホームルームの間は、ずっと上の空で、何も頭に入ってこなかった。


温泉旅行って言ってたけど、引っ越しだったんだな。


引っ越すなら、そのまま伝えてくれれば良かったのに。


俺って、そんなに頼りない?


確かに、俺たちはまだ子どもで、一人じゃ何もできない。


だけど、遠距離に耐えられる自信はあるし、葵を好きな気持ちは変わらない。


葵は、俺のことをそこまで想ってなかったってこと?


・・・考えても、さっぱりわかんねー。


洋介とカオリの誘いを断って、葵の家まで行ってみた。


表札がなくなっていて、窓は全部シャッターがおりていた。


葵がいなくなった現実を受け入れられないまま、自宅へ帰った。



「サク、おかえり」


「・・・ただいま」


そのまま2階の自分の部屋へあがろうとしたら、


「待ちなさい、葵ちゃんからの手紙を預かってるのよ」


母さんに呼び止められた。


「手紙?」


「昨日、サクが部活行ってる時に、葵ちゃんがうちに来てね」


母さんが言うには、葵のお母さんから事情は聞いていたらしい。


葵のお父さんが関西方面の支店へ異動になり、葵も関西の国立大を目指すことにした。


「葵ちゃんの気持ち、わかってあげなさい」



部屋に入って、葵からの手紙を読んだ。