保健室のオバチャン先生は、


「目の近くにボールが当たったんだし、メガネも壊れたなら破片が入ってないか心配よね。


念のため、眼科で診てもらったほうがいいと思うわよ。


2年B組の、泉川葵(いずみかわあおい)さんね。


担任には今すぐ連絡するから。


それと、あなたたちは・・・?」


「俺は、2年B組の和田洋介(わだようすけ)で、こいつはC組の橋本朔(はしもとさく)です。


そもそも、こいつが蹴ったボールがとんでもない方向へ飛んでいって・・・」



洋介がペラペラしゃべってる間に、そっと彼女を盗み見た。


彼女はうつむいて、手のひらにのせた壊れたメガネをじっと見ていた。


このままだと、ありがとうございました、って言われてオシマイだよな。


なんとかして、彼女と近づく方法はないか。


ない知恵を振り絞って浮かんだ考えは、


『壊れたメガネを弁償する』


ってことだった。


まずは、家まで送らねーとな。


「なあ泉川、おまえメガネなくて家まで帰れるか?


俺チャリ通だから、送っていくよ」


我ながら、ナイスアイディア!


「あの・・・私も自転車です」


ニケツ作戦、失敗。


そこへ、洋介が割りこんできた。


「じゃーさ、俺歩きだから、俺が泉川のチャリ乗って、泉川はサクの後ろな」


洋介、お前って、ほんといいヤツ!


「はい、わかりました」


そこへ担任がやって来て、こっぴどく叱られたけど、これからの時間をどう過ごすか必死で考えてたから、なーんも頭に入ってこなかった。