遠まわりの糸

そうやって、夏休みに入るまで、ちょこちょこ話すことを繰り返した。


おはよう、って挨拶するだけでも。


また明日、って手を振るだけでも。


積み重ねることで、俺と葵はつながっていった。



夏休みに入ったら、対外試合まで毎日練習で。


だけど、午前だけ、午後だけ、っていう日もあったから、そういう日は葵の都合があえば図書館で待ち合わせした。


葵に教えてもらいながら、1学期の復習をしたり。


葵は、国立大を目指してるだけあって、どの科目も普通にできる。



そして、対外試合当日の朝。


葵の姿を探したけど、まだみつからない。


「サク、泉川を探してんだろ」


「ああ、ここわかりにくいから、葵まよってんのかな」


「サク、泉川に告白しねーの?」


「告白?」


「だってさ、泉川のこと好きなんだろ?


つきあっちゃえばいいじゃん」


「たぶん、俺の行動を冷静にみれば、葵のこと好きなんだと思う。


だけど、葵が俺のことをどう思ってるか、わかんねーし。


葵は、自分の夢に向かってがんばってんだし。


そんな時期につきあうっていうのもな」


「バーカ」


「なんだよ、その言い方」


「泉川の気持ちを確かめるのが、告白するってことじゃねーの?


一緒に勉強してんなら、邪魔することにはなんねーよ。


サクだって、インターハイとか選手権とか、目標があるだろ?」


「でもさ、いまの関係を崩したくないんだよな」


「はっきりしろよ、サクが決めねーと、困るヤツがいるかもしれないだろ」


「なんだよそれ」


そう言いながら、スマホをチェックしたけど、何もメッセージは届いていない。


試合前のミーティングが始まったから、一度リセットした。