「・・・やっべ」


呆然と立ちすくむ俺に向かって、


「サク、どこ蹴ってんだよ!」


叫びながら、洋介は倒れている女子生徒に向かって走っていた。


ワンテンポ遅れて、俺も走った。



どーすりゃいーんだよ。


まずは、保健室か。


でも、気失ってたりしたら、下手に動かさない方がいいのか?


モロ顔面だもんな、傷とか残っちまったら・・・



「す、すみませんでした」


洋介が支えている彼女に謝り、ケガの様子が気になって顔を見た。


少し頬のあたりが赤くなっていて。


意識はハッキリしてるみたいだったけど。


彼女の足元に、壊れたメガネが転がっていた。


あらためて、俺を見上げる彼女の顔を見た。



なんだ、これ。


めちゃくちゃかわいい。


こんなかわいい子、うちの高校にいたのか?


黒髪のショートボブは、たしかに地味な印象だけど。


ぱっちり二重で、長いまつげで、目元の小さなホクロが色っぽい。


頭をフル回転させて、彼女の名前を思い出した。


・・・いや、わかんねー。



「サク、ボサーッとしてんなよ、保健室連れてくぞ!」


「お、おう」


洋介が彼女に肩を貸して支え、彼女の荷物を俺が持ち、保健室へ連れて行った。