「もしもし?」


「ちょっと朔、なにやってんのよ!


葵ちゃんにケガさせて、しかもメガネ壊しちゃって!


ちゃんと謝りなさいよ、あと、メガネ代はうちで払うから、葵ちゃんと一緒に買いに行きなさい、いいわね!」


「・・・はい」


「葵ちゃんのお母さんに代わって」


「はい」


代わります、と携帯を泉川のお母さんに渡した。


「もしもし、うん、えーいいわよ・・・うん、そうかな?


そうね、その方がいいかもね、うん、じゃあまた今度ゆっくり、はーい」


お母さんが電話してる間、当然、洋介から小声で追求された。


「電話の相手、誰だよ?」


「・・・母さんだよ」


「なんでサクの母さんと泉川のお母さんが知り合いなんだよ」


「俺だってわかんねーし」


「なんだよそれ、訳わかんね。


泉川、なんでおまえのお母さんとサクの母さんが知り合いなわけ?」


すげー直球だな。


ためらうって言葉を知らないのか?


「幼稚園で同じクラスでしたから」


えーっ、マジか?


ぜんっぜん覚えてねーし。


「なんだよサク、覚えてねーのかよ」


「・・・悪い」


そこへ、電話を切った泉川のお母さんが話に入ってきた。


「朔くん、葵と年少と年長で同じクラスだったのよ。


たんぽぽ組と3組、覚えてない?


で、朔くんのお母さんの紘子さんと友達になって、今でもママ友として仲良くしてるってわけなのよ。


もちろん、同じ高校に通ってることは知ってたけど、同じクラスにはなってないもんね」


「すみません、全然覚えてなくて」


「そうなの、じゃあ、葵と・・・」


「お母さん、やめてよ!」


泉川が感情をむき出しにしたとこ、初めて見た。


「はいはい、言わないわよ。


ごめんなさいね、メガネなんだけど、葵はひどい近視で、メガネがないと生活できないのよ。


自宅用の少し度が弱いものはあるんだけど、それだと黒板なんかの小さい字は見えないらしいの。


明日ちょうど土曜日だから、朔くん、葵と一緒にメガネを買いに行ってくれるかしら?


朔くんのお母さんのお言葉に甘えさせてもらおうと思って。


ずうずうしいけど、保険もおりるらしいから」


「お母さん、私は・・・」


たぶん、泉川は一人で行きたいって言うと思った。


だから俺は、とっさにさえぎった。


「俺に弁償させてください」