私がゼリーを食べ終わると同時にスッと戻ってきて、お会計もすることなく、お店を後にした。

「社長、あのご、ごちそうさまでした」

「うまかったな。今日はもう疲れたし、軽く酒も飲んだから部屋を取ってきた」

「へ、部屋ですか?!」

本当に夢のような一時だったと噛み締めていた時だったので、突然の爆弾発言に驚愕した。部屋?!部屋って泊まるってことだよね?えっ?ま、まさか同じ部屋?無理、そんなの無理!


アワアワと慌てふためく私に意地悪な笑みを浮かべた社長は「さあ、行くぞ」と私の腰にまた手を回した。


「うわーっ!こ、こんなお部屋があるんですね。すごい!」


「気に入ったか?やっぱり、俺の思った通りだな、ここはさ、ホテルの社長が自分の愛娘のために作った部屋らしいんだけど、その愛娘とお前以外宿泊したことのない部屋らしい」

「そ、そんな貴重なお部屋、いいんですか?!」

「本当はスイートルームが良かったんだけどな。あいにく先客ありだった」

「と、とんでもないです。むしろ嬉しいです」


社長が用意してくれたのは夜景が見渡せるスイートルームではなく、部屋一面猫のキャラクター「みぃ」に囲まれたお部屋。


ベッドはもちろん、「みぃ」があちらこちらに描かれている。可愛くて、思わず叫んでしまった。


ふわふわのベッドの上に登り、枕元に置いてあったみぃのぬいぐるみを見つけて左手で抱きしめる。こんな可愛い部屋があるんだ。しかも実家も今の部屋も畳だった私にとってベッドは初めて。


さすがに立ち上がって飛び跳ねたりはしないけれど、座ってスプリングを楽しんだ。


「なんだか眠たくなってきたな。このまま寝てもいいか?」


そう言いつつ、私の膝に頭を乗せ、ゴロンと寝そべる社長。当然、動揺して「社長」と声を掛けたけれど、お構いなし。