冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜

「それってやっぱりこのお店のお財布なんですか?私、あんまりそういうフェミニン系の服持ってないし、高い服も買えないからこの財布は合わないかなって」


「・・・お客様が着られていらっしゃるカジュアルな服装でも合うと思いますよ。それに私、実は服装にお金掛けていないんです。住んでた家はボロボロで。でも、だからこそ少しだけ自分に贅沢をした財布と就職して初めて買ったバッグは宝物です」


「そうなんだ。それなら絶対に大切にしますよね。私、大学生になったばかりでまだ自分に何が合うのか模索していて。キュートエリアはずっと好きだったけれど、大学生にはちょっと若いかなって。でも、このフロアに来て、店員さんに出会えて、よかったです。この財布ください」


ニコッと笑ったお客様は、デニムのサロペットがとてもよく似合う丸メガネをかけた女の子。嬉しくて、思わず涙が溢れてしまった。急いで財布を渡すと「ありがとうございます」と言ってくれた彼女。


「こ、こちらこそありがとうございます」


諒はこんなに嬉しくてたまらない気持ちをあのとき、抱いていたのかな?うまくいかないことばかり。無理難題を押し付けられ、もう全てを放棄しようとした。


でも、最後にもう一度だけ、そう思ったときこんな幸せが舞い降りた。また頑張ろう。諦めずにやってみよう。今、私は彼女からそんな気持ちをもらった。


「あの、これ。良かったら貰ってください」


みゆちゃんがレジを打ち、商品を受け取って出て行こうとした彼女を引き止めた。「ノベルティですか?」と聞いた彼女に私はこう言って、花のチャームを渡した。


「お買い上げありがとうございました。嬉しかったのでほんの気持ちです。内緒ですよ」