玄関を開けて、中に入る。それからすぐに電話を掛けた。ワンコール、ツーコールめに聞こえてきた諒の「もしもし」の声にツーッと一雫の涙が溢れた。


「・・・ごめんなさい。いっぱい心配かけてごめんなさい。すぐに電話しなくて、ご飯食べに行って・・・」


「飯のことは、西原を締め上げるからいい。美味かったか?俺も久しぶりに焼肉が食いたくなった。また行こう。それと手のこと聞いた。大丈夫か?すまなかった。あの女があの店舗に目をつけていたことに気づけなくて」


「なんで、なんで諒が謝るんですか?あの人のことで諒に謝られることなんて、ありません!それともやっぱりあの人は婚約者ですか?」


こんなことが言いたいわけじゃないのに、出てくる言葉がヤキモチたっぷりの皮肉で自分が嫌になる。それなのに電話越しに聞こえてきた声は諒の笑い声だった。


「な、なんで笑っているんですか?」


「いや、悪い。嬉しかったんだ。お前が妬いてくれていることが。お前が俺を好きだというのは分かってはいたつもりだったんだが、やっぱりそこまで好きでいてくれていると知るのは嬉しいな」