あのとき、言ってくれた言葉は本当に無理していたわけじゃなくて本心だったんだ。それを聞いたから余計に諒と話したくなった。


会いたい、早く会って抱きしめてほしい。時差があるのも分かっている。こんな時間に迷惑だって。それでも今すぐに声が聞きたい。


「あーあ。さっきから僕の携帯やたらと震えが治らないんだよね。誰かさんが気を遣ってカバンに携帯入れたままだからかな?でも僕が出たらきっと一番はお叱りの言葉だろうから出たくないなぁ」


チラッと私を見ながら言う西原先生に「すみません」と言って、カバンから携帯を取り出した。画面には十件の着信履歴。


さすがにお店の中で掛け直すわけにはいかないけれど、うずうずする。そんな気持ちを西原先生は察してくれて、「行こうか」とニッコリ微笑んでくれた。


「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです。それに家まで送ってくださってありがとうございます」


「いえいえ。手、何かあったらすぐに連絡してね。じゃあ電話、掛け直すでしょ?俺、行くね」


焼肉をご馳走になって、西原先生は家まで送ってくれた。ひらひらと手を振ってくれた先生の車を見送って急いで家に駆け込んだ。早く掛け直したい。


怒ってるかな?何度も電話をくれたのに掛け直さなくて心配してるかな?そんなことかがエレベーターの中でずっと頭の中を駆け巡っていた。