EMISIAには何度も足を運んでいたけれど、担当さんは相変わらず嫌味ばかり。

挙句、私たちの隣には今、中高生たちに絶大な人気のブランドキュートエリア。


「完全に嫌がらせですよ!キュートエリアなんて開店前から中高生達が行列を作るブランドですもん。しかも私たちの期間限定ショップのフロアもキュートエリアを始め、中高生向けブランドばかりの三階なんて本当にありえないです!」


最初聞かされたときは、本当に嫌がらせだと思った。キュートエリアは、中高生向けなのでコストもかなり抑えめでどんなに高くても五千円でお釣りがくるブランド。


ジョルフェムとは、全然ターゲットが違う。


そんなブランドの横で、私はどんな奇跡を起こせばいいのだろう。そんな風に考えもまとまらず、毎日自分でもわかるくらいピリピリしていた。


そして、私に更に追い討ちをかける出来事が、期間限定ショップを明日に控えた日に起きた。


「ここの店長は誰だ?」


お昼前後に突然やってきた、眼鏡で小太りの五十代後半くらいの男性。隣にはすらっと背の高い綺麗な女性。


赤い口紅を引いたその女性は高いハイヒールをコツコツと鳴らしながら、腕を組み、店内を歩き回って商品を見回していた。


「はい。店長は私です」


みゆちゃんは私の代わりに最後の打ち合わせにEMISIAに行ってくれていて、ショップには私と三宅さんの二人。後の二人は今日は休み。


少し怯えた表情でその男性の前に出て行った三宅さんを私はそっと見守った。