いつからだったかはわからないけれど、気がつけば、私はそこに立っていた。

どこだか知らない建物の屋上。

人ひとり分くらいの幅のコンクリートの道が、ぐるりと建物の縁を回っている。

「そんなとこで、なにしてんの?」

まだ不安定さを残した思春期の声に振り向くと、私の背後にある柵の向こう側で、高校生くらいの子がこっちを見ていた。

「なにも」

そう答えると、その子は柵を構成する金属の棒を掴み、暗い穴のような目を私に向けた。

「……そっちに行っていい?」

広さに問題はないように思えたけれど、私は小さく3往復、横に頭を振った。

どうしてそうしたのか、自分でもわからないけれど。

その柵を越えさせてはいけない。

頭の奥で、そんな声がしたのだ。

「……私がそっちに行く」