名のない足跡


ネスタ・サヴァ国からは返事なし。


2ヶ月も待って来なければ、もう来ないと思う。


そこで、あたしはある決心をして、現在書庫にいる。



「…何か考えがおありなのですね?」


セドニー長官の微笑みに、あたしの良心が疼いた。


「う…セドニー長官に迷惑かけてしまうかもなんですけど」


「構わないわ!ルチルちゃん!!」


ロードさんが棚の間からひょこっと顔を出す。


最近よく書庫に出入りするので、ロードさんとも仲良くなれた。


「…何故君が言う」


「長官の迷惑は、あたしの迷惑でもあるんですよ?」


「どんな理屈だ、それは」


二人のやりとりに笑ながら、借りた本の山をよいしょ、と持ち上げる。


「では、お借りしますね!」


「重そうですよ?手伝いましょうか」


セドニー長官が席を立とうとするのを、あたしは「大丈夫です!」と言って止めた。


軽く礼をしてから、足早に書庫を立ち去った。



書庫から出た瞬間、あたしはせっかくの親切を断ったことを、すぐに後悔した。


本の重さで思うように進めず、あっちへふらふら、こっちへふらふら。


どうしよう…とか思っていると。