名のない足跡


「そこには、ウェルス・ネスタ・サヴァの情報がまとめてある」


「あ、はぁ」


あまりにあっさりと情報をくれたことに驚いたあたしは、気の抜けた返事をした。


「何だその感謝の欠片もない言葉は。私は貴様がいずれ来る時の為に、まとめておいたと言うのに」


しかめ面をしながら、カーネ司令官は頬杖をつく。


あたしはファイルをしっかりと胸に抱き、今度は心からのお礼を言った。


「ありがとうございますッ!!」






指令室を後にし、あたしたち三人は一旦執務室へ戻った。


さっき貰ったファイルを、三人で交互に見る。


「サヴァ国の王、アルファ。信念を貫く。世界で唯一の女王…うわっ、そうだったの」


「ネスタ国ジーク王。頭脳明晰。うーん、敵に回したくありませんね」


「ウェルス国王ウィリー。国民に話を聞こうとすると"とにかく強い"と言って皆逃げる。故に詳しいデータなし…なんじゃそりゃ」


ウィンがソファに腰掛け、ウェルス国のファイルを机の上に投げた。


「えっ、ウェルス国の情報ってそれだけなの?」


「いや、王に関してはそれしかない。国のことなら他にも少しあるぜ」


ほら、と言ってウィンが渡してくれた資料に目を通す。