名のない足跡


伝令部の仕事は、情報収集。


他国へ赴き、国民や商人…たくさんの人から情報を得る。


伝言を受け取って伝えたりするのも仕事の一種で、関係のない人には秘密厳守。



いわば、伝令部は情報の宝庫だったりする。


「ふん。随分と来るのが遅かったな。城内を駆けずり回る前に、来るべきだと思うのだが」


あたしはぐっと喉をつまらせた。


その通りだった。


自分のことで精一杯だったんだ…。


―――でも。


「確かにあたしは、最初にしなきゃいけないことを後回しにしました。…でも、今ここで悔やんだって、時間の無駄です。やるべきことは今やらないと」


あたしは、ぐっと手を握りしめた。


悔やむことは、いつだって出来る。


ただ、今はその時じゃない。


「お願いします。力を貸してください」


姫様、と後ろからライトの声がした。


わかってる。頭をそんな簡単に下げるな、でしょ?


でも、あたしの頭は下げることしかできない。


王は下げちゃいけなくても、あたしは何度だって下げるよ。



―――それで、この国が護れるのなら。


「…ホレ」


「え?」


顔を上げると、カーネ司令官からファイルを渡された。