名のない足跡


でもその一方で、こっちの事実には何も触れてこない。


それは、自分たちからこの先のヒントは与えない、ということ。



つまり…



「あたしは、試されてる」



どんな行動をとるのか、試されてるんだ。


この先のあたしの言動ひとつで、国同士の関係が変わるかもしれない。


それが良い方向へいくか、悪い方向へいくかわからないけど。



あたしは急に、国を背負うという重みが、心にずっしりと乗っかってきた気がした。


「試されてるなら、早く行動すべきだ。わかってんだろ?」


「そうですね。まずは手紙を書いたらよろしいのでは?」


手紙。


一番手っ取り早い方法はそれだ。


「うん。でもその前に、指令室寄っていい?」





案の定、あたしたちの姿を見たカーネ司令官は、面倒くさそうな顔をして言った。


「…何か用か、ハナタレ」


「ぶふっ!!」


あたしのすぐ後ろでウィンが噴き出した。


じと、と睨んでから前へ向き直る。


「…カーネ司令官のことだから、あたしが何で来たかわかってるかと思いますが…。他国の行動について教えてもらいたいんです」