名のない足跡


メノウ交易官はふむ、と言って口に手を当て、話し始めた。


「まず、ネスタ。科学技術が発展しているだけあって、国中にいろんな移動手段がある。ほとんどが電力で動いていたな。農具等も、扱いやすく改良されている。少しずつだが、そういった物を輸入してきていた。

次に、サヴァ。砂漠に囲まれているから、もの凄く暑い。肌を火傷しないよう、国民のほとんどが長いスカーフを巻いている。オアシスの天然水はかなり美味いな。商人がよく店を出していて、珍しい品が手に入る」


国外へ出たことのないあたしは、興味津々で聞いていた。


そこで一区切りしたところで、メノウ交易官はより一層ムスッとした顔になった。


「…最後にウェルス。実際、ウェルスは小国が多数集まって出来ている。上陸した土地によって、雰囲気はだいぶ違うから、確かなことは言えないが…。ウィリー王がいる城下町、シゼは、金持ちたちの巣のようなものだ」


ウェルス国…。


この先、一番厄介なのはこの国だ、という妙な確信を感じた。


「こんな感じだが…」


「ありがとうございました」


一通り話を聞き終えたあたしは、次の行動へ移ろうとして、ふと思い立った。