名のない足跡


あたしは目をぱちくりさせた。


「…あたしの意見は…?」


「は?そんなの関係ねぇだろ。王の主張する案だけ取り入れたら、国はすぐ滅びるぜ?…大体あんた、スピーチのとき自分で言ってただろうが」


…そうだった。


今までの四人と明らかに違う答えに、あたしは動揺してしまった。


「何?あんたあの時の言葉ウソだったわけ?」


「…違うわよッ!!アドリブだものっ。今ちょっと驚いて言ったこと忘れてただけッ」


「…アドリブ?」


あたしは、言わなくてもいいことを言ってしまったことに気づいた。


何か言われるかと思ったけど、ウィンは「ふーん」と言ったっきりだったので、あたしはホッとした。


「…今の質問に、もう言うことはない?」


「いーぜ。次」


「じゃ、次で最後ね。もしあたしが重要な仕事で国を数ヶ月離れるとして、後を頼まれたら、あなたはどうする?」


今度こそは、今までと同じ答えが返ってくると思ってたあたしは、またしても予想を裏切ったウィンの次の言葉に、また驚いてしまった。


「俺もついていく」


「は!?」