名のない足跡


「では、既に五人を廊下で待機させておきました。私が退室しましたら、一人ずつ名前をお呼び下さい」


「…はひ」


緊張して舌がもつれるあたしに、アゲートさんは微笑みながら部屋を出ていった。


あたしは手元の書類を眺める。


この並んでる順で面接しよう。


一番最初は…


「クラウドさん、どうぞ」


失礼します、と言って入って来たのは、渋いおじさま!って感じの人。


身のこなしが何とも紳士的。


「お初にお目にかかります、ルチル様。クラウドと申します」


「よろしくお願いします。では初めに、自己PRをどうぞ」


クラウドさんは綺麗な低い声で、この国に対する想い、自分の出来る事、得意な事、あたしのスピーチの感想等を、落ち着いて話してくれた。


「…なので、補佐として仕えたいと思いました」


「素敵なご意見、ありがとうございました」


あたしはにっこり笑って、次の項目へと目を走らせる。


「次に…二つの案があり、あたしがある一つの案しか受け入れない。もう一つの案は廃案だ、と言ったとき、あなたはどうしますか?」


今、初めて質問内容を見たけど、この質問をどうしてアゲートさんが取り入れたのか、あたしはよくわからなかった。