今までにない超スピードで、勢いよく執務室の扉を開けたあたしは、アゲートさんと向かい合って座っている人の姿に驚いた。


「…え?ライト?」


「姫様、そんなに勢いつけると、扉が壊れちゃいますよ」


「…そこまで怪力じゃないわよ」


確かライトは、今日は護衛部の指揮やら何やらで、護衛出来ないですすいません、とか言ってたのに。


「ライト、仕事は?」


「あぁ、後は俺がいなくても大丈夫そうだったんで、任せてきました」


「あ、そうなの」


「ルチル様、先ほどライトくんと話していたのですが…」


アゲートさんが、扉を閉めるように、と合図する。


あたしは静かに扉を閉めた。


「すいません、アゲートさん。遅れてしまって…。で、何ですか?」


「はい、ちょっとした提案なのですが、ルチル様の補佐を選出したほうがよろしいかと」


「…補佐?」


「ええ。私はさすがにもう年なので、ルチル様と行動しやすい若い方を、と…」


アゲートさんは力なく笑って言った。


「えっ!? アゲートさん何歳なんですか」


「…お恥ずかしながら、今年で五十です」



ええぇ!?


あたしは目を見開き、絶句した。


こんなに若そうに見えるのに…