名のない足跡


「ま、これ以上劣ることのないよう、せいぜい頑張れハナタレ」


「ち、ちょっ…!!」


お決まりの文句を最後に付け加えつつ、去っていくカーネ司令官。


ちょっと待って?


今…もしかしなくても…


「うわー、あのヒトが褒めるなんて珍しい」


突然、真横から聞こえた声にあたしは驚き、短い叫び声を上げる。


「ぎゃっ!! ユナ副隊長!?」


「…うン、女の子にそんな風に驚かれたの初めて」


どうやら、ユナ副隊長を傷つけてしまったらしく、あたしは慌てて謝る。


「すっすいません!! いつからそこに!?」


「セドニー長官に文書を届けに行こうと歩いてたら、面白い組み合わせを発見したから、ついね」


「面白いんですか…」


何だかライトみたいなことを言うなぁ、と思いつつ、ユナ副隊長のさっきの言葉を振り返る。


「ユナ副隊長も、あたしが褒められたって思います?」


「…嬉しそうだね?」


えへへ、とあたしは笑う。


だって、あのカーネ司令官が!!


「僕も、ルチルちゃんのスピーチは良かったと思う。気持ちが伝わってきたし」


「ありがとうござ…ルチルちゃん?」


…すっごく聞き慣れない呼び方が聞こえたのは…


気のせい?