書庫に向かう途中、ふとあたしは疑問を口にする。
「書庫って私語厳禁じゃないの?」
「大丈夫ですよ。今の時間帯だと、みんなお昼食べたり仮眠とったりしてるはずですから」
ふぅん、とあたしは呟き、その後、他愛ない会話をしているうちに書庫へ着く。
アニスの言った通り、書庫には誰もいなかった。
けど…
「なっ、何この本の山!?」
あたしは、机の上だけでは収まりきらず、床にまで侵食している本の山を見つめた。
「これ、セドニー長官なんですよ。気になることがあると、片っ端から本開いてるみたいで」
「せ、セドニー長官が!?」
几帳面そうに見えて、意外と大ざっぱらしい。
少し残念…。
「おれも最初見たときは驚いちゃって…賊の仕業かと思っちゃいました」
「うーん…。片付けていかないのって、いくら長官でもダメよね…。言っとくわ」
「…やっぱり、ルチル様もそう思いますか?」
「え?」
床に散乱している本を拾いながら、アニスは続けた。
「先輩達も、普段は尊敬しているセドニー長官に対して、書庫の扱いにだけは文句を言ってるんです」
「…アニスは、違うの?」


