名のない足跡


†††


「終わりましたっ!アゲートさん!!」


「早いですねぇ。よくできました」


戴冠式から一週間。


あの日、戴冠式が終わった後、あたしのスピーチの反響は凄かった。


城内で誰かに会う度に、「良かったです!」と声を掛けられ、国民から届く手紙の山。


あたしに会おうと城門までやって来た人もいたという。



…つまり、いい意味で反響を呼んだのです!!



これは、あたしにとてつもないパワーをくれた。


今日までの一週間、王としての雑務や礼儀作法など、たくさんのことをアゲートさんから教わってきたけど、どれも猛スピードで会得し、やり遂げた。


そして今日も絶好調で、与えられた仕事をきっちりこなした。


「休憩、いただいていいですかっ?」


「ええ、どうぞ。一時間程したら再開しましょう」


「ありがとうございます!!」


あたしは勢いよく立ち上がり、執務室の扉を開け、廊下に出た。


ここ一週間、休憩をもらうと、あたしは決まってある行動をとっていた。


それは、王に近づくためにあたしが出来ること。



あたしは廊下を駆けつつ、すれ違う人との挨拶は欠かさないでする。


限られた休憩時間だから、時間との勝負!!