「ですよね?みなさんはこの国を捨てたりしないでしょう。だからあたしも、この国に命を懸けます。

この国はみなさんがいるからこそ、ここにあるんです。この国は、みなさんの命なんです」


揺れていた空気は、再び静けさを取り戻した。


「…だからあたしは、国を護りたいんです。

父のとき以上に良い国に、とは言いません。あたしの大好きな国の状態を保ちたいんです。

ですから、今この国に住んでいる人たちを、誰も欠くことは出来ないんです」


あたしは、大広間にいる人たちを見渡した。


あたしが言いたいことは伝えた。


あと言い残したことは…


「あと、あたしのこと"王様"って呼ばないで下さいね。"姫"のままで結構です。

本当の王だと言えるのは、この国を護り、みなさんに認められたときだと思うんです。

一年の猶予を下さい。この一年で、出来る限りのことをします。

一年後、みなさんに認めてもらえたら、あたしは本当の王になれます。

認めてもらえなかった場合は…兄のラッドに王位を譲ります」


「ラッド王子は行方不明なのでは?」


「無事だという確信などないじゃないですか!」