名のない足跡


あたしは深くお辞儀をした。


後ろに控えているライトが、笑ってくれている気がした。


「…王が、そう簡単に頭を下げてはいけませんよ」


セドニー長官が笑ながら言うので、あたしはパッと顔を上げた。


「私があなたに申し上げられるのは、一つです。どのような時でも、王は民にとって"絶対"の存在。王は民にはなれないのです」


「…?」


困った顔をしても、セドニー長官はそれ以上何も言ってはくれなかった。


「たまには、まともなこと言いますねー長官」


ロード副官は、ツカツカとあたしの前まで歩み寄り、ウインクしてみせた。


「意味がわかったら、またいらして下さいね」






「…意味わかった?ライト」


書籍部を出て、次に伝令部へ向かう途中、セドニー長官の言葉の意味をライトに訪ねた。


「ええ。まぁ、大体は」


「はー。やっぱ頭のいい人は違うわね。あたしも頑張ろう」


一人虚しく気合いを入れつつ、伝令部指令室の前で立ち止まる。


すると。


「何をしておるのだ?」


驚いて振り向くと、カーネ司令官が後ろに立っていた。


うっ…相変わらずすごい気迫…!!


あたしは半歩後ずさってしまった。