名のない足跡


朝食を済ませ、どうせまた着替えるんだから、と軽い服装に着替えて、あたしは部屋から出た。


「ライトー」


「準備出来ましたか?では、参りましょう」


あたしとライトは、まず書籍部へ向かうことにした。



戴冠式は正午からで、正装に着替えるのがその二時間前(女の子はいろいろ大変だしねっ)。


ってことは、あと一時間で各部を回らなきゃいけないから、本当に挨拶ぐらいしか出来ない。


あたしたちは、せかせかと書籍部へ向かった。


「…おや?ルチル様?」


「本当だー!どうしたんです?」


書籍部の長官室の扉を軽くノックし、中へ入ると、セドニー長官とロード副官がいた。


「あっ…えっと…」


お礼を言うだけなのに、何故か緊張しちゃって、次の言葉が出てこない。


こんなんじゃ、戴冠式のスピーチがどうなることやら…!


「姫様、ファイトー」


ライトがぼそっと言う。


助け舟を出してくれる気はないらしい。



あたしは深呼吸して、しっかりと二人の目を見た。


「昨日は、父の…父のせいで、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。そして、あたしの為に忠義を誓って下さって、ありがとうございます」