名のない足跡


†††


「ふぁ、何か寝不足かも」


ついに戴冠式が行われるという当日の朝、あたしはいつも通りの時刻に目を覚ました。


昨夜、セドニー長官とデュモル隊長が訪れてきた後、話は脇道に逸れ、くだらない話(噂話などなど)に花が咲き、気づいたら夜明け間近だった。


けれど、昨夜で二人とはだいぶ打ち解けたと思う。


そのことが、あたしの気持ちを軽くした。



それと同時に、あたしは不思議に思った。


あたし…自分が王になるってこと、知らないうちに自覚してる?


それがいいことなのかはわからないけど、父様が死んだ、ということを、認めているのは自分でもわかった。


「父様…」


父様が自殺したと聞いて、あたしは驚いた。


愛想を尽かされたのか、と泣きそうにもなった。


でも、ライトから聞いた話によると、父様は"死ななければならなかった"らしい。


少なくとも、自分が王になれば、その理由がわかるかもしれないと思ったし、直感的に、いずれその真実と向き合うときが来る気がした。


あたしはぶんぶんと頭を振って、頬を両手でぱし、と叩く。


「しっかりしろ、あたし!そんなんじゃこの先やってけないわよ!!」


「その意気です、姫様」