名のない足跡


あたしとアズロは、ロズが描いたであろう魔法陣の中央に立つ。


「…ごめんねロズ。またお世話になっちゃって」


「じゃ、一つ借しね♪」


ウインクしてそう言うロズに苦笑しながらも、あたしは深呼吸をした。


「…お願い」


「おっけー」


呪文と共に、眩い光が溢れ出る。


二回目でも慣れない、この感じ。



アズロが、そっと手を握ってくれた。


驚いたあたしに、アズロは「これで怖くないでしょ」って笑って言うから、あたしも笑うしかなかった。


本当に、気配り上手なんだから。


「…あー、補佐くんなんか言ってるけどムシね」


耳を済ますと、確かにウィンが怒って何か叫んでる。


でも、呪文が発動してるキィィンって音で、よく聞こえない。


「行ってらっしゃい!」


ロズの終了の合図と共に、足元がぐらりと揺れ、辺りの景色も霞んでいく。





最後に見えたのは、夜空に咲く大きな満月だった―――