名のない足跡


「何だ?俺についてきて欲しいのか?」


変なこと言うのはその口か。


「結構ですー。アズロで十分足りてますっ!」


つんと答えるあたしに、カチーンときたらしいウィンは、口元をひくひくさせながら言った。


「頼まれても絶対行かねぇ。…俺は待機組だ」


「補佐くんは、オレらとの連絡係だよ」


アズロの言葉に、あたしはまたも眉をひそめる。


「…連絡係?」


「コレ、補佐くんがジーク王から貰った、ネスタ国産の小型無線機」


そう言ってポケットから取り出されたのは、手のひらサイズの縦長の無線機。


「コレでいつでもフォーサスと連絡が出来ちゃうという優れもの!」


「…ウィンのやつ、いつの間に…」


あたしより、他国と接触してるんじゃないかって思っちゃう。


でも、全部あたしの為だってわかってるから、何も言えないんだけど。


あたしはその場にいた人たちをぐるりと見渡した。


「みんな…ありがとう」


返事はなかったけど、みんなあたしに微笑みかけてくれた。