名のない足跡


「ウィンや…アズロには?」


「えっ?言ってないわよ?…迷惑かけたくないし」


二人には、随分助けられた。


けど、これからあたしがしようとしていることに、巻き込みたくない。


「…兄様、あたしがいない間、国を頼んでいい?」


「ルチルほど上手くはまとまんないだろうけどな。やってみるよ」


兄様は、あたしが上手く国をまとめてるって言うけど…絶対ウソだ。


兄様の方が威厳あるし。



あたしは胸ポケットから、小さく折りたたんだ手紙を取り出し、兄様に渡した。


「…ルチル?何だこれは」


「兄様へ手紙。…もしあたしが戻らなかったら…読んで」


瞬間、兄様の表情が曇った。


「…何言ってんだ?何考えてるんだお前。ライトに会いに行くだけじゃ…」


「兄様…ごめん。それだけじゃないの」


それが何なのかは、あたしは言わなかった。


口に出すことで、挫けてしまう気がしたから。



兄様は悲痛な面持ちで、あたしをそっと抱きしめた。


あたしも兄様の背中に手を回す。