名のない足跡


メノウとカーネは、フォーサス国で生まれ、家が隣同士だった為、よく一緒に遊んでいた。


ある日、二人は少しの好奇心から、入れば二度と戻れないという"魔の樹海"と呼ばれる森に足を踏み入れてしまった。


その当時、二人はまだ七歳で、今考えれば笑ってしまうくらい馬鹿な自殺行為だ。


けれど無邪気な子供二人は、どんどん奥へと進んでしまった。



二人が間違いに気づいたのは、辺りが薄暗くなってからだった。


「お互い、軽率な行動をとったな、カーネ。結局、道に迷って帰れなくなって」


「散々泣き喚いて、声まで枯れる始末だ。もう二度とあんな体験はしたくないぞ、私は」


暗闇の中の微かな音は、例えそれが葉が揺れる音だったとしても、子供に恐怖を与えるのには十分だった。


二人は光を求めて走り、転び、体中傷だらけになりながらも、ただひたすら走った。



だから、誰かに呼び止められた時、二人の張り詰めていた糸は、一瞬にして切れてしまった。