名のない足跡


「いひゃいっ!何すんろよアズロッ!!」


ろれつも上手く回らないし、端から見れば、なんとも格好悪い。


今度ウィンに試してみよう。


「ホラ、いつもみたいに笑ってればいーじゃん」


「へ?」


「それか怒鳴る」


アズロの手が離れるとすぐに、あたしは引っ張られた部分を片手でさする。


「怒鳴るって…何それ」


「オレの君のイメージ。笑うか、怒鳴る」


あたしは一瞬ポカンとしてから、眉根を寄せる。


「イメージって…そんな勝手な。しかも超極端じゃないのよ、それ」


笑ってるか、怒鳴ってるか。


…ちょっと怖い。


しかも、そんなイメージを持たれてたとは、何だか悲しい。


「しょんぼりなんて、らしくないよ」


らしくない。


そう言ったアズロの顔をじっと見ながら、あたしは考えた。



らしくない…じゃあ、あたしらしいってなんだろう?