名のない足跡


「………っ」


あたしは勢いよく起き上がり、部屋の扉を開けた。


ゴツンッ


途端に、鳴り響くイヤな音。


「……………ごつん?」


嫌な予感が胸をよぎり、押した扉をそろりと引いてみる。


案の定、そこには。


「…あー。星が回ってる」


「きゃああぁアズロ!!」


頭をおさえ、フラフラと立ち上がるアズロに、あたしは必死で謝る。


「アズロッ!! ごめんねっ!! もともと聡くない頭がさらにっ…」


「…え。何それケンカ売ってんの?」


あはは、と笑うアズロに、あたしは少しだけホッとした。


それと同時に、申し訳ない気持ちで、あたしは聞いた。


「…ひょっとして…ずっと扉の前にいた…?」


「当たり前。護衛だもん。…そんなにしょんぼりするなって」


「…うん」


「しょんぼりしてんじゃん」


そう言うと、アズロはあたしの頬をぐみーっという効果音がつきそうな感じで、横に引っ張った。


い、痛い。