思い出すのは、


あなたが闇に溶けた後のこと。





‡‡‡


不思議と、泣き崩れたりはしなかった。


ただただ、呆然と暗闇を見つめ、立ち尽くしていたあたしは、駆けつけてくる足音に気づかなかった。



「ルチル!!」



勢いよく開け放たれた扉を、あたしは見もしなかった。


「…ルチル?」


「…様子がおかしくないスか?」


姿を見なくても、声だけでわかった。


兄様と、アズロだ。



食い入るように、開け放たれた窓の外をじっと見つめていたあたしは、雪が降っていないことに気がついた。


それと同時に、二人の足音が近づいてくる。


「…ルチル、大丈夫か?」


兄様の心配が、声から伝わってくる。


あたしは瞳を伏せ、か細い声で呟いた。


「…じゃ、…い…」


「え?」


「大丈夫じゃ…ないっ…!」


その瞬間、あたしの中の何かの糸がプツンと切れ、すうっと意識を失った―…。