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バカだ、俺は。
執務室の窓から飛び降りた俺は、持ち前の運動神経で木へ飛び移り、無事地面へ着地した。
もう、あのひとには会えない。
ずいぶんと前からわかっていたことなのに、どうしても耐えられなかった。
あのひとの中から"俺"という存在が消えてしまうことが、嫌だった。
だから、俺のことを忘れられないように、小さな足跡を残した。
その足跡は、きっとあのひとを苦しめる。
わかっていながら、自分勝手な行動をした。
「…最低だな」
この城の敷地内から出るために走っていた俺は、自分を嘲笑うように、吐き捨てた。
本当に、最低だ俺は。
あの冷たいウィンよりも、もっと最低だ。
初め、俺はそんなことを考えていたせいで、ウィンの幻覚を見たんだと思った。
けれど、その人影に近づくごとに、本人なんだと気づく。
「……ウィン」
少し距離をあけて立ち止まった俺は、しまった、と思った。
誰かに会ってしまうことを、全く考慮に入れてはいなかった。


