「父と兄以外と関わりを持ったことのない弟は、一瞬戸惑いました。けれど、姫が笑いかけてくれて、心が温かくなった弟は、笑顔を取り戻しました」


また少し間があき、カタン、と小さく音がした。


なんとなく、ライトがあたしに背を向け、窓の外を見ているような気がした。


「弟はその国で、知らなかったことを学び、知らなかった気持ちを感じました。暗い闇で過ごしていた弟が、光に包まれた瞬間でした」


その言葉に、あたしは少しだけ安心した。


あの頃のライトの笑顔に、きっと嘘はなかったんだ。


「すぐに兄を見つけた弟は、細かく連絡を取り合っていました。兄もまた、幸せな時を過ごしていました。ただただ、平凡な毎日が過ぎ…兄が二十歳を迎えました」


あたしはゆっくりと顔をあげた。


予想通り、ライトは窓枠に手を掛け、外の景色を眺めていた。